「天気の子」は新海誠の集大成だ!-
7月19日に公開され、大ヒットを記録している映画「天気の子」。
いやー面白い!
「天気の子」は新海誠の集大成、最高傑作だと思っています。
というのは、「天気の子」は、新海監督が描いてきたテーマを改めて提示すると同時に、「君の名は」以降、ヒットメーカーとしての宿命を両立させたという点で、画期的だったと考えているからです。
今回は、「天気の子」が新海誠監督にとってどういった作品だったのか、考えていきたいと思います。
新海誠は、何を主題とする作家なのか?
新海監督がこれまで一貫して描いてきたテーマは「男女の距離」です。
「距離」とは物理的な距離だったり、心の距離感だったりします。
そしてもう一つ重要なテーマが、「結ばれない男女」。
お互いのことを想っていても結ばれないという切なさも、新海監督作品の特徴です。
各作品は新海監督にとってどのような意味を持つか?
「ほしのこえ」‐新海監督の原点
「ほしのこえ」では、世界を救うために遠宇宙へ旅立つ女の子と、地球に残された男の子との距離。心ではつながっていても、物理的距離が離れていくにつれてメールが届くまでの期間が離れてしまうという切なさ。
「雲のむこう、約束の場所」-初めてチームで制作
「秒速5センチメートル」‐「結ばれない男女」の到達点
「秒速5センチメートル」では、かつて両想いになった二人が、転校や進学、就職によって離れ離れになってしまい、偶然の再会を果たしても、もう出会うことはできないというストーリー。
「言の葉の庭」‐初めてハッピーエンドを描いた作品
「秒速5センチメートル」よりもさらに世界を小さくした。
一時の恋愛という失恋が前提かのようなテーマを扱いながらも、新海監督作品としては初めて主人公二人の思いが結ばれる形でエンディングを迎える。
「君の名は」‐「売れ線」をテーマに
「結ばれない男女」という切なさが新海作品の真骨頂であるが、「君の名は」では方向転換。ハッピーエンドを迎える。
テーマ性では「男女の距離感」を大きく扱った。
新海監督のこれまでの作品を大まかにまとめると、こうなります。
その上で「天気の子」はどういう作品だったのか?
「天気の子」-売れ線と作家性との両立
これまでの新海作品では、男の子は遠ざかっていく女の子に何もすることが出来ないという無力さが、切なさを孕む独特の作品性につながっていました。
「天気の子」では、帆高が「選択」をすることによって、世界の形が変わってしまう。
これが新しい。
「君の名は」では、「選択」によって石森町の隕石事件を無かった事にする。
だが「天気の子」では、「選択」を取っても、出来事自体を無かったことにはしませんでした。
新海作品で初めて、主人公が世界の行く末に対して責任を取ったのです。
男女の行く末という観点から見ると、
「ほしのこえ」-女の子を見送るだけ
「秒速5センチメートル」-再び巡り会えても、声をかけることはできなかった
「言の葉の庭」-二人は結ばれるが、それぞれの道へと進む
「天気の子」-二人は結ばれる。
世界の行く末という観点から考えると、
「ほしのこえ」-世界は滅亡する(と示唆される)
「君の名は」-世界の滅亡は、なかったことになる
「天気の子」-世界は、変貌する
「ほしのこえ」と「天気の子」を比較したとき、「新海誠作品」としての主人公の成長、変化が見られたことに、僕は感動しました。
…と、色々と語ってきましたが、そんなもの作品の個別評価と何も関係ないじゃないか!というセルフツッコミをしておきます。
どうも僕は、物語の構造にばかり目がいく人間のようです。
お読みいただき、ありがとうございました。